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今年に入って4冊目の本、黒木亮「カラ売り屋」(講談社文庫)を読んだ。
書名の「カラ売り屋」と「村おこし屋」、「エマージング屋」、「再生屋」の4つの中編小説が収めらている。
「カラ売り屋」はタイトルから分かるように株取引、「村おこし屋」は地域活性化のコンサルタント、「エマージング屋」はアフリカ、アジアの新興国との金融取引(銀行)、「再生屋」は企業の民事再生の弁護士が主人公。
それぞれの仕事のプロとしての主義があり、企業組織や既成社会への反発心や批判的な登場人物が活躍する。村おこし屋は、社会を斜めに見て自己がもうかればいいという悪徳コンサルタントだが、その友人の主人公と対比的に描かれている。再生屋はバブル期の銀行に乗せられ経営者とその会社の後始末の再生の顛末記。
巻末の江波戸哲夫の解説にあるように「カラ売り屋」と「エマージング屋」は、著者自身の20年以上の国際金融、証券取引の専門家としての経験を背景とした小説。一方「村おこし屋」と「再生屋」は、著者の綿密な取材力と自身の体験(地方出身)と独自の視点に基づく小説。江波戸の言葉を借りると「先の二作のプロフェッショナルな情報性と、後の二作の持つドラマ性と言う両輪に乗って、黒木の作品世界は一層旺盛に展開していくに違いない」。
年末年始に読んだ「法服の王国」は紛れもなく後者の流れの作品。
日本の現代社会における前近代性、自分経営者としての独立した個人と大企業組織、地方と中央(国)などの背景とさらにグローバルな経済世界での経験は交差する作家黒木亮。彼の今後にさらに期待したい。
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2014年01月13日
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